パートやアルバイトで働く場合、社会保険には入れないと考える人も多いのではないでしょうか。
社会保険とは、健康保険や厚生年金などの制度を含む保証制度のことで、主に正社員が加入することで知られています。でも、実はパートやアルバイトでも社会保険に加入することができます。
そこで、パートやアルバイトで社会保険に加入する方法や、加入した際のメリットデメリットなどをまとめてみました。
社会保険の加入条件
パートやアルバイトという雇用形態で社会保険に加入するためには、規定の条件を満たさなければなりません。まずは、その条件を詳しく解説していきます。
勤務時間や勤務日数が正社員の4分の3以上
まず一つ目は、勤務時間や勤務日数が、正社員の4分の3以上あること。例えば、正社員が週に40時間(8時間×5日)働いているとしたら、その4分の3にあたる週30時間以上働いていれば加入することができます。
新たに追加された5つの条件
2016年10月から、上記の条件に加えて新たに5つの条件が追加されました。正社員の4分の3以上の勤務をしていなかったとしても、次の5つの条件を満たしていれば加入対象となります。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月の賃金が8.8万円以上(年間約106万円以上)
- 1年以上勤務しているか、1年以上勤務する予定
- 従業員が501名以上の企業で勤務している
- 学生でないこと
これらの条件を満たしている場合は、社会保険に加入することができます。
保険料の計算方法
社会保険料はそれぞれの収入に応じて計算されます。一般的に、社会保険で引かれる保険料は、給与の13~14%程度。(年度によって保険料率は変動しています)
さらに40歳以上の場合は介護保険料もプラスされるので、引かれる金額はもっと多くなります。では、実際に具体的な計算例を見ていきましょう。
20歳で月収15万円
20歳で毎月15万円ほどの給与を得ている場合の社会保険料は以下の通りです。
150,000円-(7,425円(健康保険料)+13,725円(厚生年金))=128,850円
45歳で月収15万円
45歳で月収15万円ほどの給与を得ている場合の社会保険料は以下の通りです。
150,000円-(8,722円(健康保険・介護保険)+13,725円(厚生年金))=127,553円
加入するメリットデメリット
社会保険は生活していくうえで、手厚い保障が受けられる便利な制度ですが、実は加入することで損をしてしまう場合もあります。
社会保険に加入するメリットとデメリットを確認して、加入すべきかどうかをきちんと見極めましょう。
メリット
健康保険料が安くなる
すべての国民は健康保険に加入する義務があります。社会保険で健康保険に加入しない場合は、国民健康保険に加入しなければなりません。
国民健康保険は全額自己負担ですが、社会保険の場合は事業主が半額負担してくれています。そのため、健康保険料が安く済みます。
年金額が増える
厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額が多くなります。加入年数が長ければ長いほど年金額も多くなり、将来の不安を解消してくれます。
老後の年金額を増やしたいために、社会保険に加入するという人も少なくありません。
保障が受けられる
社会保険に加入することで、色々な保障を受けられるようになります。
例えば、女性の場合であれば、出産手当金や出産育児一時金など、育児や出産に関わる保障が受けられるようになります。
また、ケガや病気で3日以上休まざるを得ない場合には、条件を満たせば傷病手当金などが支給されます。
デメリット
続いてデメリットを見ていきましょう。
給与が減る
社会保険に加入する前は、所得税や住民税などが引かれるだけだったのに、加入後は、さらに社会保険料がマイナスされてしまいます。
せっかく一生懸命働いて稼いでも、受け取る給与は少なくなってしまうのが大きなデメリットです。
特に注意が必要なのは、配偶者の扶養家族に入っている主婦の場合です。扶養家族になっていれば、健康保険料も年金も少ない負担で加入できます。
ところが、配偶者とは別に社会保険に加入することで、それぞれに保険料がかかったり、扶養控除がなくなったりと、世帯収入が大きく減ってしまう恐れがあります。
結婚後、パートとして働く場合は、世帯収入と保険料を見比べて、損をしない働き方をしていかなければなりません。
社会保険加入条件に関する疑問
社会保険の加入条件に付いて、よくある疑問を集めてみました。
月収8.8万円以上とは残業代も含みますか?
社会保険の加入条件の一つに、月収8.8万円以上という項目があります。これは、固定給のことを指していて、不安定な収入である残業代は含みません。
固定給とは、基本給や交通費、役職手当など、必ず毎月もらえることが決まっている給与の事。
一方で残業代は、残業の有無によって金額が異なります。そのため、規定である8.8万円には含まずに計算されます。
500人以下の企業でも社会保険に入れますか?
社会保険の加入条件の一つに、従業員数が501名以上という項目があります。しかし、2017年度より、500人以下の企業であっても、社会保険に加入できるように法律が改正されました。
500人以下の企業が社会保険に加入する条件は、働いている人の半数以上と事業主が社会保険に加入することを合意した場合です。この合意があれば加入することができますし、逆に合意が取れない場合は加入することができません。
半年ごとに更新する雇用形態では社会保険に加入できませんか?
社会保険の加入条件に、1年以上働いている、または働く予定という項目があります。これは、どのような雇用形態であったとしても適用されます。
半年ごとに更新をしているとしても、すでに1年以上働いている場合や、1年以上更新を続ける予定がある場合は加入することができます。
106万円の壁とか130万円の壁って何ですか?
106万円の壁や130万円の壁とは、配偶者の扶養範囲の問題によって生まれた言葉です。
現代の日本では、年間130万円を超えて働いてしまうと、配偶者の扶養控除から外れ、夫婦それぞれが社会保険に加入しなければなりません。また、扶養控除が受けられなくなり、税金も増えます。
これによって、年間129万円を稼ぐよりも年間130万円を稼ぐ方が、収入が逆に減ってしまうという現象が起こります。
つまり、130万円の壁とは、扶養控除の範囲のことであり、これを超えると扶養家族を外れてしまうという意味です。
また、106万円の壁とは、501人以上の企業で働いている場合の、社会保険加入の条件に当てはまることを意味しています。
まとめ
社会保険は正社員でなくても、パートやアルバイトでも加入することができます。特にここ数年の働き方改革により、さらに加入しやすくなりました。加入するための条件をよく確認して、加入できるかどうかを見極めましょう。
また、配偶者の扶養範囲で働きたいという場合は、合計収入が130万円を超えないように計算して働きましょう。(従業員が501人以上の企業の場合は106万円を超えないように)