期間工に影響は?トヨタなど大手メーカーが雇用ルール改正で無期雇用を回避

期間工に影響は?トヨタなど大手メーカーが雇用ルール改正で無期雇用を回避

期間工は企業と労働契約を結ぶときに、2年11ヶ月というケースが非常に多いですね。

このように契約期間を定める雇用契約を「有期雇用契約」といい、契約期間満了になると否応なく辞めなくてはなりません。

このようなことを防ぐために一定期間同一の企業に勤務をすると、「無期雇用契約」にすることができるという法律がありますが、トヨタやホンダ、日産などの自動車大手をはじめとする有期雇用契約社員を必要としている多くの企業で、無期雇用契約を回避する動きがあるので、このことについて説明をしていきます。

無期雇用を避けるための「5年ルール」

平成24年8月に成立(平成25年4月1日施行)した「労働契約改正労働契約法」により、企業と労働者の労働契約期間に「5年ルール」があります。

企業と労働者の労働契約には「無期雇用契約(以下無期社員という)」と「有期雇用契約(以下有期社員という)」があって、一般的に無期社員は正社員で有期社員はパートやアルバイト、期間工などの非正規社員のことを示します。「5年ルール」はこの有期社員の人たちを守るためにできた労働契約の形です

では、少し詳しく5年ルーについて説明をしていきます。

具体的な5年ルールとは

有期社員の約30%が、通算5年を超えて有期労働契約を反復更新、つまり繰り返し契約を更新しているという実態があり、多くの企業にとって有期社員が戦力として定着しているという事実があります。

特に長期間雇用されている有期社員の場合、企業の事業運営に不可欠で常に必要な戦力であるケースが多いので、1年契約だとしても毎年自動的に契約が更新されていきます。

このような有期社員を労働期間の定めのない無期社員にすることが現実的であるため、契約更新が5年を超えた場合、労働者本人が望んで申請することで無期社員になれるという法律です。

これによって契約満了時に企業側が契約更新をしないで有期社員を辞めさせるという、いわゆる雇止めを回避させることで、有期社員を守れることになります。

ただし無期社員になったとしても、正社員という立場ではないことは理解しておきましょう。

法律の抜け道を利用して無期雇用をなしに

実はこの5年ルールには、とんでもない落とし穴があったのです。まさに法の抜け道というより、ザル法に近い法律が、この5年ルールなのです。

それではこの法の抜け道について解説をしていきます。

法の抜け道とは

5年ルールとは前述のように有期社員が同じ企業で、通算5年を超えて勤務をしていた場合、本人が希望をすれば雇止めのない無期社員になれるというのが改正労働契約法という法律です。

しかし改正労働契約法を成立させるために企業側の要望を受け入れて、契約終了後から再雇用までに空白期間を6ヶ月以上空けると、それ以前の契約期間はリセットされてカウントされないという「抜け道」を用意したという経緯、つまり落としどころを用意したということがあります。

改正労働契約法ができる前の空白期間ですが、仕事に慣れた労働力を確保しやすくするため、トヨタは1ヶ月、ホンダ・ダイハツ・日産は3ヶ月でした。しかし改正労働契約法ができてからは、すべての自動車大手が設定した空白期間は6ヶ月となってしまいました。

自動車大手ばかりではなく自動車関連産業を含めて、有期社員である期間従業員を必要とする多くの製造業がこの空白期間6ヶ月を採り入れました。

これによって企業側としては無期社員を増やすことに対して、一種の防波堤を築き上げることができたのです。

期間従業員に大打撃

改正労働契約法の目的は2008年に起きたリーマンショックが大きな原因になっています。リーマンショック後、大量の雇止めが発生して社会問題になったことがありました。つまり雇止めによって、労働者本人の意思とは関係なく職を失った人が激増したわけです。

このようなことがないようにとできたのが、改正労働契約法でした。しかしこの改正労働契約法によって、有期社員が無期社員になれなくなっているという事実も見逃せません。

1500万人もいる有期社員

厚生労働省によると有期社員は全国で1500万人にのぼるといいます。このうち同じ企業で5年以上続けて働く人は30%、約400万人いるといわれています。この400万人の人たちがすべて平成30年には無期社員になる権利を持てるわけです。

しかし企業側が前述のような抜け道を使うことによって、有期社員を無期社員にすることを防いでいます。また、自動車大手などのように2年11ヶ月という制度を使わず1年契約を繰り返しているような企業の場合、平成30年以前に雇止めをしてしまうケースも出てきているといいます。

つまり改正労働契約法の効果が逆に出てしまい、400万人の有期社員が無期社員になれなくなっている可能性があるのです。

このため、批判を浴びている自動車大手や自動車関連産業の製造業では、正社員登用を推進していると強調しています。

とはいえ、実際に正社員になった人が有期社員全体に占める割合は、10%程度にとどまっている企業が多いといわれています。

今後、期間工には影響あるのか

では、このような状況下だと、期間工には何か大きな影響があるのかと、心配になります。

企業側が批判を恐れて期間工の募集をしなくなるのではないかとか、期間工の採用基準が高くなのではないかとか、いろいろと考えてしまいます。

そこで、改正労働契約法が期間工になにか影響を与えるのか、ということを考えていきます。

改正労働契約法が期間工に与える影響は?

改正労働契約法が期間工に与える影響には一体どんなことが有るのかというと、その答えはほとんど何もないということになります。

なぜかというと、そもそも期間工になる目的が「短期間でガッツリ稼ぐこと」だからです。もちろん一部の人は安定した正社員になることを求めていますが、それは少数派であって、決して期間工になる動機の本流ではありません。

期間工になる人には、いろいろな理由でお金を稼ぎたいというケースが多くあります。それも長期間で稼ぐのではなく、短期間で稼ぎたい理由のある人が多くいます。例えば起業資金を貯めたいとか、お店を開く開店資金にしたいなど、理由は様々です。

そうなると無期社員になる必要性がないので、別に何の影響もないわけですし、さらにいえば正社員になれなくても問題はないことになります。

そもそも期間工と自動車会社などの企業との労働契約は、多くの場合35ヶ月(2年11ヶ月)がほとんどです。再雇用してもらうためには、6ヶ月間のクーリングの期間を挟まなくてならないので、もともと無期社員になることはできません。

期間工になるほとんどの人はこのことを知っていますから、初めから何か影響があるとは考えていないといえます。

この法改正によって期間工になりやすくなる?

では、この改正労働契約法のために期間工になりづらくなったのか、あるいは逆に期間工になりやすくなったのか、さらに待遇はどうなったのかということを考えていきます。

企業側は正社員を増やしたくない

景気に左右される製造業の場合、企業側としては正社員をあまり増やしたくないということが現実問題としてあります。

例えば自動車などは生活必需品であるケースは少なく、景気が悪くなると一番初めに買い控えが出てくるアイテムです。そうなると製造ラインにいる人達に、人余り現象が出てしまいます。

自動車本体の売れ行きが落ちれば、当然自動車関連産業の部品メーカーも需要が減ってしまうので、こちらも人余り現象が出てしまいます。

こうなると企業は余った人員に対して、いってみれば無駄な賃金を払い続けることになりますから、この状態が続くと経営の危機になってしまいます。

この時に有期雇用契約をしている人が多くいれば、雇止めをして人員数を調整できますから、有期社員は企業にとって一種の安全弁になるわけです。

このような事情を抱えている企業はたくさんありますから、改正労働契約法ができたことによって期間工にはなりやすい環境になったといえます。

人集めのために好待遇

では改正労働契約法によって、期間工の待遇はどう変わったのでしょうか? この答えを一言でいうと、待遇はかなり良くなっています。

その理由として、期間工は不安定だから嫌だという意識を持っている人でも、その意識を超えてでも期間工になりたいと思わせる魅力を出すために、好待遇になっています。

とくに大手自動車メーカーの満了金の額ですが一番多いのがトヨタで、その額は約306万円にもなります。2年11ヶ月で306万円ですから、1日に直すと2,914円にもなります。本来の期間工の仕事以外に、短時間のパートをやったような金額になります。

大卒者の年収が大企業で約400万円、中小企業だと300万円をきりますから、2年11ヶ月で306万円は非常に大きな金額だといえるでしょう。

それに加えて多額の入社祝い金や特別手当などが支給されるケースも珍しくないので、期間工の待遇はかなり好待遇だといえます。他にも毎月の食費補助や、ホンダのように勤務中の食事は一食無料、などというケースもあります。

さらに寮はほとんどの場合個室ですからプライバシーを守ることは難しくはないし、寮費は水道光熱費を含めて無料という企業が大変多くなっています。寮費を徴収される場合でも、格安という企業がほとんどです。つまり、出費を抑えて貯蓄がしやすい環境が整っているわけです。

このような好待遇を受けることができる今こそ、期間工になる大きなチャンスではないでしょうか。